林康夫―浪江に捧ぐ―展
2024年9月3日(火)〜11月5日(火
益子陶芸美術館<2階展示室スポットライト>
栃木県芳賀郡益子町大字益子3021
0285-72-7555
1928年京都生まれ。40年に京都市立美術工芸学校絵画科に入学し日本画を学ぶが、太平洋戦争が勃発したため15歳で予科練へ入隊し、17歳の時に特攻隊に志願する。特攻機に乗る直前に終戦を迎え、京都に戻って陶芸家の父である林雨の仕事を手伝いはじめる。その後父からの自分の仕事をしろという言葉を受け、自由な作陶を目指し、47年に前衛陶芸家集団となる四耕会に創立メンバーとして参加。翌年には日本初の陶オブジェと言われる、用途にとらわれない立体造形作品「雲」を発表する。50年にパリで開催された「現代日本陶芸展」に選抜され、国際的に高い評価を得る。その後もイタリアのファエンツァ国際陶芸展で日本人初のグランプリを受賞したのをはじめ、カナダ、フランス、ポルトガルなど海外のコンクールで次々とグランプリを受賞。また、四耕会の後に創立された走泥社でも活躍した後は、飛行兵として体験した夜間飛行の錯視経験に基づいた二次元(平面)と三次元(立体)が複雑に交錯する作品や2000年代以降に取り組んだ屋根のある「鹿会」シリーズなど精力的に作品を発表する。
今回で紹介するのは、林が近年取り組んでいる東日本大震災で被災した福島県浪江町の廃屋をモチーフとした作品(浪江町の風景。制作された家々は歪み、ところどころにできた傷跡から感じる震災の凄まじさが胸に迫る。その一方で、タタラづくりの質感からは温かさと素朴さも感じられる。第一線で活躍し続ける林の「現在」が展開されている。