走泥社再考 前衛陶芸が生まれた時代 in 菊池寛実記念 智美術館 2024

カテゴリー: 陶芸最前線.

 

辻村塊陶展

2024年7月17日(水)〜22日(月)
日本橋髙島屋 美術画廊
中央区日本橋2-4-1
03-3211-4111

1976年奈良に生まれ、 94年父・辻村史朗に師事。2000年奈良・桜井の山里を切り拓き、窯を築いて独立する。
窖窯を中心とした自然に囲まれた工房では、伊賀、引出黒、志野に加え、井戸、信楽、唐津、備前など、幅広いやきものが制作されている。野趣溢れる焼締から絵付けなどのやきものに共通しているのが、成形したてのようなやわらかさと素朴なあたたかみを持つ土味だ。
鳥のさえずり、虫の音、風の音、それに土の声を聞きながら制作されるやきものは、自然の素材を相手にしている料理人にも通じるところがあり、料理映えすると評判だ。
今展は、壺、花器、茶碗 、酒器、器など、辻村氏の世界観が存分に発揮された新作の発表。



《伊賀花入》高さ35cm、29.4×18.5cm


《染付茶碗》高さ5.7cm、径14.6cm



篠原希作陶展

2024年7月11日(木)〜17日(水)
東武百貨店池袋店6階3番地美術画廊
豊島区池袋1-1-25
03-5951-5742

1971年大阪に生まれ、91年信楽の古谷信男に師事。98年信楽窯業試験場釉薬科を修了し、翌年信楽・黄瀬で独立する。
2004年伊賀に新たな窖窯を築き、07年信楽焼伝統工芸士に認定される。08年日本伝統工芸近畿展に入選、12年第23回秀明文化基金賞を受賞し、19年スタンフォード大学やユタ州大学でワークショップを開催。本格的な窖窯で焼成した自然釉による力強く趣のある焼き肌には定評がある。今回は、壺や花入をはじめとした茶陶に加え、食器なども展示予定。



《広口壺》高さ47cm、径37cm


《焼締ポット》各高さ9.5cm、16.5×10.5cm


《焼締飯碗》各高さ7.5cm、径14cm


《焼締徳利》高さ13cm、径9cm


《窯変蹲壺》高さ19cm、径7cm



英国ロンドン派展

2024年6月30日(日)〜9月23日(月)
益子陶芸美術館/陶芸メッセ・益子
栃木県芳賀郡益子町大字益子3021
0285-72-7555

日本と英国の陶芸の関係は、1920年にバーナード・リーチが濱田庄司と共に日本風の3室の登り窯を築いた時代に遡ることができる。それを機にリーチ工房と益子町との関係は現在も続き、当館では2011年に「ある日のヴァンガード・コート」、13年に「Leach School」、18年に「英国ラブリィ~派」など、英国陶芸を多様な切り口で紹介する展覧会を数多く開催してきた。さらに、14年度にスタートした「益子国際工芸交流事業」では、多くのイギリス陶芸家を招聘し、滞在制作が行われてきた。
英国は、ヨーロッパの中で陶芸大国として知られる。 なかでも首都ロンドンでは、オーストリア出身のルーシー・リー(1902〜95)やドイツ出身のハンス・コパー(1920〜81)などからはじまり、現在ではジュリアン・ステア(1955〜)やジェ二ファー・リー(1956〜)といった多くの陶芸家が活躍している。
本展覧会は、当館のコレクションの核のひとつでもある英国陶芸の中からロンドンに焦点を絞ったもので、今回新たに「ロンドン派」と名づけて紹介する。



ルーシー・リー《白釉線文鉢》1958年頃 Estate of the artist


ジェニファー・リー《青、光輪がかかった泥炭の帯、オリーブ色の縁》
2013年 益子陶芸美術館


ジュリアン・ステア《二重楕円の骨壺》2020年 益子陶芸美術館


ハンス・コパー《ポット》1972年頃 Estate of the artist


リサ・ハモンド《ソーダ釉刷毛目皿》2014年 益子陶芸美術館


クリス・キーナン《雲のフォーメーション》2014年 益子陶芸美術館



走泥社再考 前衛陶芸が生まれた時代

2024年4月20日(土)〜9月1日(日)
菊池寛実記念 智美術館
港区虎ノ門4-1-35 西久保ビル
03-5733-5131

1948年に京都の陶芸家八木一夫、叶哲夫、山田光、松井美介、鈴木治の5人で結成され、前衛陶芸家集団として戦後日本の陶芸を牽引した走泥社は、中国均窯の釉調にみられる蚯蚓(ミミズ)が泥をはった跡の曲がりくねった線状模様の「蚯蚓(きゅういん)走泥文」から名付けられた。いわゆる器ではなく、立体造形として芸術性を追求した陶芸作品いわゆる「オブジェ焼」を創り出した。
本展では結成25周年となる1973年までに焦点をあて、25年の間に同人であった42名のうち作品が残る32名の制作をとおし、その活動を展示する。走泥社の前衛性が特に活動期間の前半に顕著なためで、同時に同時期に展開された他の前衛陶芸活動や日本の陶芸に影響を与えた海外の作品を資料などにより紹介する。
なお、本展は3章構成となって、当館では1章と2章を前期、3章を後期として会期中に展示替えを行うとともに講演会なども企画されている。

<1章>
器の形態を立体造形として自立させようと模索する走泥社最初期の作品の紹介。この時期の制作には、中国や朝鮮半島の陶磁器にもとづく様式や技術を基盤にしつつ、器体をカンバスに見立てたようなパブロ・ピカソの陶器や絵画、イサム・ノグチのテラコッタをはじめとする同時代の美術表現からの影響が見受けられる。陶芸界の伝統的な規範から離れ、絵画的な文様表現で自身の抱くイメージを現し、あるいは陶磁器が持つ造形上の要素を現代の造形に昇華させようとした点に走泥社の前衛意識が窺える。
<2章>
現在では陶のオブジェとは一般的に実用性のない陶の造形作品を指すが、当時は造形を通じた心象風景の表象と捉えられていた。2章では、前衛陶芸家たちが作者の内面性を表現する陶芸の在り方に創作の可能性を見出し、そのような制作が根付いていった時期の作品を紹介する。走泥社以外で活動していた有力な陶芸家たちが同人として合流し、それぞれの陶芸観にもとづく制作によって多様性ある前衛陶芸家集団として走泥社の骨格が定まっていった時期でもる。
<3章>
1964年に開催された「現代国際陶芸展」で海外の陶芸表現が初めてまとまった形で紹介されると、伝統や素材、技術の捉え方の違いから生じる異なる陶芸表現に日本の美術・陶芸界は衝撃を受け、動揺した。そして自己の創作を検証することで、心象風景の表象として始まった陶のオブジェが、前衛性を求めるだけでなく個々人の造形表現としての成熟へと向かっていった。
3章では、海外の制作が盛んに紹介されるなか、草創期からのメンバーと次世代の若手作家とが併存し、多様な造形表現が為されるようになった充実期の作品を紹介する。

◎講演会1「今、なぜ走泥社なのか」
大長智広(京都国立近代美術館主任研究員)
5月18日(土)15時から B1展示室
◎講演会2 「三輪龍氣生が語る走泥社前後の青春陶芸
三輪龍氣生(本名:龍作/十二代休雪、元走泥社同人)
聞き手=島崎慶子(当館主任学芸員)
7月13日(土)14時から B1展示室にて

◎学芸員のギャラリートーク 
いずれも土曜日、15時から
5月11日、25日/6月15日/8月3日



八木一夫《白い箱OPENOPEN》
高さ29cm、23×23cm 1971年 京都国立近代美術館


八木一夫《ザムザ氏の散歩》
高さ27cm、27×14cm 1954年 京都国立近代美術館


鈴木治《ロンド》
高さ43.5cm、19.5×19.5cm  1950年 華道家元池坊総務所


山田光《二つの塔》左高さ81.5cm、30×8.7cm
右高さ77.5cm、30.5×10.8cm 和歌山県立近代美術館


藤本能道《日蝕》
高さ52cm、38.5×26cm 1957年 京都市立芸術大学芸術資料館


宮永理吉《パイプ》
高さ26cm、18×14.5cm 1972年 広島県立美術館


三輪龍作(龍氣生/十二代休雪)《愛の為に》
高さ17.5cm、27×8cm 1968年 国立工芸館


林康夫《ホットケーキ》
高さ18cm、33×32cm 1971年 和歌山県立近代美術館



リニューアルオープン記念特別展
「シン・東洋陶磁-MOCOコレクション」

2024年4月12日(金)〜9月29日(日)
大阪市立東洋陶磁美術館
大阪市北区中之島1-1-26
06-6223-0055

1982年に開館した大阪市立東洋陶磁美術館(MOCO=モコ)は、世界に誇る安宅コレクションや李秉昌コレクションを中心に、各時代の陶磁器による日本陶磁コレクション、鼻煙壺の沖正一郎コレクション、現代陶芸コレクションなどで構成されている。
約2年間の改修工事により、エントランスホールの増改築をはじめ、展示ケースの改修やLED照明の更新などの展示環境を整備し、さらに国宝「油滴天目茶碗」専用の独立ケースを導入し、リニューアルオープンを迎えた。記念特別展のタイトルの「シン」は、「新」たなミュージアムへと歩み始めること、「真」の美しさとの出会い、「心」がワクワクする鑑賞体験をという三つの願いが込められており、国宝2件、重要文化財13件を含む珠玉の東洋陶磁コレクションなど約380件が展示される。
とくに、透明度の高い高透過ガラスによる専用展示ケースにおさめられ、360度から鑑賞できる国宝「油滴天目茶碗」は、碗の内面を浮かび上がらせるスポット照明と紫励起LEDによるベース照明がなされ、同作品の美しい斑文と繊細な光彩を浮かび上がらせている。さらに映像ルームにおいては、ハンズオンコントローラーにより4Kモニターに投影される高精細3DCGを好きな角度から見ることができるようになっており、国宝の新たな魅力に出会うことができる。



国宝《油滴天目茶碗》高さ7.5cm、口径12.2cm  南宋時代・12-13世紀  建窯
大阪市立東洋陶磁美術館(住友グループ寄贈/安宅コレクション)写真:六田知弘(以下同)


国宝《飛青磁花生》高さ27.4cm、径14.6cm 元時代・14世紀  龍泉窯
大阪市立東洋陶磁美術館(住友グループ寄贈/安宅コレクション)


《青磁瓜形瓶》高さ25.7cm、径10.6cm 高麗時代・12世紀前半
大阪市立東洋陶磁美術館(住友グループ寄贈/安宅コレクション)


《青磁水仙盆》高さ5.6cm、22×15.5cm
北宋時代・11世紀末-12世紀初  汝窯
大阪市立東洋陶磁美術館(住友グループ寄贈/安宅コレクション)


《粉青粉引簠》高さ13.6cm、22×31cm 朝鮮時代・15世紀 
大阪市立東洋陶磁美術館(住友グループ寄贈/安宅コレクション)


《青花鯉文扁壺》高さ24.1cm、21.5×11.1cm 朝鮮時代・16世紀
大阪市立東洋陶磁美術館(安宅昭弥氏寄贈)


《青花虎鵲文壺》高さ44.1cm、径34.2cm 朝鮮時代・18世紀後半
大阪市立東洋陶磁美術館(住友グループ寄贈/安宅コレクション)

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