土と抽象―記憶が形に生まれるとき―展 in 益子陶芸美術館 2020

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土と抽象―記憶が形に生まれるとき―

2019年10月13日(日)〜2020年1月13日(月)

益子陶芸美術館/陶芸メッセ・益子
栃木県芳賀郡益子町大字益子3021
0285-72-7555

戦後の現代陶芸に、土の物質性や始原性を美のより所とした抽象造形がしばしば登場する。いわゆる無釉の焼締陶に限らず、成形や着色の技術を駆使し、創作的な表現として土の姿を提示する作家の動向は、窯業地のくくりや特定の様式という観点では捉えきれないものがある。いわゆるプリミティヴィズムの延長上に位置しながらも、より現代的に土の真性と向き合う作家たちの活躍が続いているのだ。
本展は、独自のアプローチにより土の形象を追求する現代作家9名、井口大輔、泉田之也、黒川徹、五味謙二、戸田浩二、美崎光邦、三原研、宮澤章、ジェニファー・リーの表現に焦点を当てたもので、共通して浮かび上がる「記憶」というキーワードとともに、各々の作風から見える言葉-技の修練、幾何学性、古との対話、器形性、反復と選択、詩情など-を手がかりに、土で表現することの今日的意義を見つめる。


井口大輔「黒銹陶銀彩壺」2017年


泉田之也「積層」2019年


黒川 徹「深層」 2018年


五味謙二「shi-tou「シサ」」2019年


戸田浩二「Sphere」2017年


美崎光邦「藍彩器」2019年


三原 研「鼓動」2011年


宮澤 章「積化象嵌花生」2019年


ジェニファー・リー「斑点のオリーブ色の壺」2015年

井口大輔(Iguchi Daisuke  1975年栃木県生まれ)
峻厳な器形と銀彩の文様で織りなす《銹陶》と名づけたシリーズを展開している。籾灰をコーティングして焼成することにより古色を帯びた土肌を生み出している。2019年第14回パラミタ陶芸展大賞受賞。

泉田之也(Izumita Yukiya  1966年岩手県生まれ)
朽ちていくものから生まれる美しさ、「集中と広がり」というベクトルの異なる力など、相反する作用を同時に表現することをテーマとする。素材に和紙を取り入れるなどして躍動感のある造形を手がけている。

黒川 徹(Kurokawa Toru  1984年京都府生まれ)
数学理論を独自に解釈して造形原理とした「銀黒陶」を追求している。2012年滋賀県立陶芸の森アーティスト・イン・レジデンス招聘作家ほか、中国、ロシアなど各地で滞在制作、ワークショップを行なっている。

五味謙二(Gomi Kenji  1978年長野県生まれ)
「焼成するためのやきものを創る」ことをテーマに、現在は《shi-tou》シリーズを展開する。化粧土をかけて焼成して剝落させた土肌を作り出すことにより経年変化した自然物のような風合いを表現する。2015年より茨城県立笠間陶芸大学校特任教授。2019年第25回日本陶芸展大賞受賞。

戸田浩二(Toda Koji  1974年愛媛県生まれ)
古代中国の金属器に着想を得た造形を焼き締めで表現している。古美術が持つ清らかさや静謐さを現代の感性で土に換えたシャープな造形を手がけている。

美崎光邦(Misaki Mitsukuni  1951年千葉県生まれ)
手びねり成形して着色した器形を手がけている。抽象絵画の色面構成のような広大な広がりや崇高さを土で表現している。

三原 研(Mihara Ken  1958年島根県生まれ)
《起源》、《景》、《久遠》などアシンメトリーな造形を次々に展開するが、一貫して焼締焼成により、器表に表れる色彩や質感を追求する。焼き締めで表現した作品は、故郷、出雲の風景を彷彿とさせる。2007年度日本陶磁協会賞受賞。

宮澤 章(Miyazawa Akira  1950年秋田県生まれ)
化粧土をかけて焼成した後にサンドペーパーで器表を磨く《積化象嵌》という手法を追求している。女性のフォルムや柔らかさを着想としている。

ジェニファー・リー(Jennifer Lee  1956年スコットランド生まれ)
器の表面に収縮率の異なる酸化金属を使った色面構成を一貫して追求している。2014年滋賀県立陶芸の森招聘作家。2018年ロエベ・クラフト・プライズ大賞受賞。2019年益子国際工芸交流事業招聘作家。

 

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